
映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
2001/日本 監督、脚本:原恵一
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この映画は何度観ても、同じところで泣く。ひろしの回想シーン、階段を駆け上がるしんちゃん、「死にたくない…」と叫ぶチャコと、そっと肩を抱くケン。理屈で説明できるが、それさえ野暮と思えるぐらい、シーンひとつひとつに深い感銘がある。
かくいう私も、サントラ
TVでも映画でも崩れる事がないと思われた「家族愛」が、これほど試されたストーリーはないだろう。「懐かしい世界」へ心を奪われた結果、ひろしとみさえがしんのすけ達のことを忘れる。ひまわりさえ邪険にするみさえには、恐怖すら覚えた。親が子供を捨てるのだ、これほど大きなショックはない。それでも、文字通り未来を賭けてひたすら走ったしんちゃんの姿に、陳腐な言葉はいらない。
イエスタディ・ワンスモアのケンとチャコは、現在に失望し、未来を奪おうとした。過去に戻って、かつて明るい未来を信じた時代をもう一度やり直すのだと。彼らは悪い人間ではない。大人ほど彼らに共感できると思う。彼らが放つ甘い過去の匂いは、現実で頑張ってる人ほど逆らいがたいだろう。ほんの一時、今を忘れて想い出の中で生きたいと願う人の気持ちは、否定すべきではない。
しかし、こうも言えるのだ。「自分の勝手な失望で、他人の未来を奪って良い法はない」と。ケンやチャコの行っていることは、実は、無理心中で子供を道連れにする親だったり、自分が死にきれず他人を殺す犯人と同一のものだ。大人を閉じこめ、子供を無理矢理洗脳しようとした彼らのやり方は、やはり、間違っている。その「間違い」を、身体を張って指摘したしんちゃん。しんちゃんはただ、大人になりたかっただけ。たとえ動機が不純でも、成長を止めることはできないのだ。
それを、台詞でなく、演出と動画で表現しきった原恵一と言う人のセンスは、本当に、圧倒的に凄い。
過去とは、ひたるものでも、切り捨てるものでもない。ただそこにあり、礎となって、現在の自分を支えるものなのだと思う。ひろしの「俺の人生は、つまらなくなんか、ない!」の叫び。この映画に涙した大人は彼と同じくらい主張できるのだろうか。
★★★
この映画は、いろいろなところでもてはやされた。同年上映された『千と千尋』より推す人は多い。
ただ、文藝春秋に掲載されていた快楽亭ブラック氏の文章を読んで、誉めることをちょっと控えようと思った。大人の週刊誌に掲載されているとはいえ、しんちゃんはもともと家族のものだったのだ。しんちゃんの真似をする姿に、大人は嫌悪していたのだ。それが少し大人受けする映画になったからと言って、家族から取り上げる筋合いはなかろう。
大人が誉めすぎると、権威になってしまう。しんちゃんを『権威』にしちゃいかんのだ。おすぎさんみたいに「私は嫌いだから観ない」と言ってくれる方が安心する。大人から適当に嫌われ白い目で見られている方が、逆に好きなことが出来るというもの。
それは「戦国大合戦」を経て「ヤキニクロード」で果たされるのだが、もう一回、次回作で原監督には完膚無きまでに、打ちのめされることとなる…くっ。
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「聖なる泉:ザ・ピーナッツ」は挫折しましたorz
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